提供:KEN☆KUN

EMERGENCY


[始めに]

2000年9月。東海地方を記録的な集中豪雨が襲った。浸水被害に見舞われた方々には心からお見舞い致します。
今回、KEN☆KUNのヨタハチ君も水害に見舞われた。と言っても水没したワケではなく、ヨタハチ名物「雨漏り」です。

[歴史上、最も錆びやすいクルマ]

ヨタハチの宿命的な天敵、その名は「錆」。その中でもオキシ酸化鉄(早い話が赤錆)が最も恐い。
化学的に錆とは「鉄が酸化したモノ」なのはこの業界の人なら誰でも知ってるハズ。しかし、赤錆が特に目の敵にされるのはナゼか?それは浸食するからだ。
赤錆は表面組織が荒く、空気や水を通す上に水分を溜め込む性質があり、放っておくとどんどん広がる。本来鉄は酸化鉄の状態で安定するので、不安定な鋼材から安定的な錆になろうとするのはしかたない。
だがしかし!それを邪魔してこそ貴重な工業的文化遺産を守る文明人の勤め。さぁ錆止め剤と電子錆止めセイバーにただでさえ少ない財産から予算を裂こう!
話が大分それたがヨタハチはタルガトップ形状で軽量化と言う現代の自動車では有り得ないテーマで設計されたため、薄い鋼板の袋構造の塊。一度錆びると際限無く、しかも見えない内側から錆が侵攻していく。そう、まるで成人病のように…。

[まずは水抜き]

雨漏りするのは判っていたが、助手席の床には水位が1pの水たまりが発生。なかなかの効率で雨を集めたようだ。
とりあえずシートレールを外し(フロアパネルに直付けなので下からソケットレンチで外す)水を抜く。
シートのクッション(イイ感じでヘタってる)がかなりの水を吸ってるから干しておく。

ペタペタに水を吸ったフロアマットも全て外す。

[水が溜らない工夫]

しばらく様子を見てると(観察してたワケではないが…ってシフトノブを造っていたのだ!)フロアの一番低い場所に水が溜った。ここに水抜き穴を明けよう。
フロアとセンタートンネルの継ぎ目辺りに気になる段差を発見。気になった(気になってしまった)のでドライバーでコジってみると「うに〜っパキッ!」と剥がれた。そう、「J's TIPO」誌やってた剥がしてアンダーコートってヤツでした。
なんだか楽しくなってきて(数日来ボランティア活動で休みが無かったからテンションが上がっとったのかな?)バリバリ剥がしてみた。
約束の時間になったのでBUGにモトコンポのサルベージを依頼。「君も近いウチに同じコトをするかもヨ?」と手伝わせる。

[サルベージ]

アルトワークスにモトコンポが積めるのか?基本的かつ最重要な課題を考えていなかった。が、なんとか最小限の被害で回収完了。しかし、次は無い。

[縫製職人を味方に付けて]

内装で水分が溜りそうなヤツを剥がしていく。「昔はコンナのが普通だったのか?」とか思える麻の消音材もバリバリ剥がす。ペダル・レバー類が通し構造になってたから外れない。
BUGに相談したところ、縫い目に沿って裁断するしかないらしいのでハサミでバサバサと最短距離を切る(縫い目なんか無視!)。
ドア周りのウェザーストリップも剥がす(コイツは再利用するのでスマートに剥がす)。

[アンダーコートよ永遠に]

「J's TIPO」誌と同じくドライバー→バーナー→タガネと進化を進めフロア付近は全て剥がした。

センタートンネルには残ってるが、ココのマットは使うつもりなのでヨシとした(途中で「なんで剥がし始めたんだろう?」とか思ったりもしたが…)。

[下地作り]

古い接着剤の跡やアンダーコートの残りカスが美しくないのでワイヤブラシやらで剥がす。
車内は阿鼻叫喚の砂嵐が吹き荒れる(サンダーのカップワイヤーで剥がしてたからホコリは舞うしヒゲは跳ぶしやかましいしで…)。
塗装前の最後の仕事に水抜き穴を明けた。10oのドリルが使えるからコイツでイイや。


[緊急事態発生]

目も当てられんくらいに錆たシートレールを「サンポールプール」に泳がせてる時、警備会社から連絡が入った。
「バッテリーが外されましたヨ!」
いま目の前で整備してるコトを伝えると「バッテリーが上がってるのでエンジンを掛けて充電してほしい。」とのコト。キーを回しエンジンを掛け……ようとしたが無音。「とりあえず充電機に繋いでおきます。」と伝え、警備システムのウチ通信回線を切ってもらう。
まぁ一晩充電すれば何とかなるだろう。

[シートレール復活術]

・状況…錆びている
・可動…するなら手を付けない
サンポールで錆を溶かしながらハンマーでコンコンと可動部の癒着を剥がす。エンジンクリーナー吹きながらヤルと浮いた塗料も溶けるし奥の錆も掻き出せて便利でした。
鉄骨に力を掛けるときには軍手くらいはしておこう(傷口にサンポールが沁みるから…)。

シートレール修理の手引き。
@レールを外す。この時、ナットが固着してる場合はナットブレーカーで破壊する……のはお下品なのでビス頭をマイナスドライバーでコジっておいてナットを回すと外れる(公算が高い)。
Aスプリング類を外す。サビで鋼線が脆くなってるので注意。私のは折れちまった。
B錆取り。サンポールプールにドブ漬けとかケミカルで溶かすとかサンドブラストとか好きな方法でどうぞ。
C動作チェック。ツメが軽く動くかがポイント。最初はハンマーなどで無理やり縁を切る。その後エンジンクリーナー(なぜか調子がいい)を可動部に吹きながらキコキコする。なお酸を使った場合はよく水洗いするコト。手がピリピリする。
D中和。酸で錆落としをした場合は石鹸水(弱アルカリ)などで中和するそうです。後で知りました。
E組付け。


番外編
サンポールはよく溶ける!今日溶かしたモノ、サビ、指紋、コンクリート、ゴキブリ。

溶けて無くなったスプリングと引っ張りワイヤーを新造。近所のホームセンターにて適当な材料を購入。後は破壊したボルトの代わりを探すだけだ。

[究極の錆止め]

イロイロとゴミが溜ったから掃除機&エアガンで掃除をする。ホコリが残ってると「ホコリを塗料で塗り固める」コトになるから割と時間をかけて掃除をする。
残りが少なくなったPOR-15を効果的に使うための配分を考える。やはり
@水が溜る場所
A錆が発生しやすい場所
Bスポット溶接の端面
C穴の中、
が重要。フロアの一番奥、エンジンルームの隔壁の角から順番に手前に塗り進める。広面積には普及品の錆止めペンキをベターっと塗るから本当に重要な場所を選んでPORは塗る(コヤツはとにかく高い!)
PORのウリの浸透力と接着力。この特性を活かしてコーキングを剥がした後の目地や正体不明のFRP補強部、アンダーコートの端などに塗り込む(と言うより流し込む)。
硬化までの時間で普及品の錆止めを買いに行く。ウェザーストリップの張り付けにゴム用接着剤の永遠の定番「G-17」も仕入れよう。コーキングも黒のヤツをゲット!
錆止めペンキを大ハケで景気良く塗る。穴の中にはスポイトで吹き込んでみた。

[もう一つの検案]

実はワイパーが動かない。正確には動きが渋すぎるのだ。事前調査でブレードの当りが強すぎるのは判っていたのでソコを改良すればいい。とりあえずワイパーステーを外してスプリングの状態を確認する。

う〜ん。こいつぁ外れないナ。このまま切るっきゃない!
なんとか切りました!(ニッパーが欠けたが…)あまり切り過ぎてスカスカではマズいのでとりあえず3コマだけで様子を見よう。

[雨とコーキング]

土砂降りの雨の中でも屋根があるから平気なのサ。
錆止めペンキの乾き具合を見てから足元の奥からコーキングをする。注意したいのはコーキングは下向きだけしかやらないってコト!上向きに塗るとせっかく落ちてくる雨水が内部に溜って錆の原因になるからダ(雨漏りを直せと言う突っ込みを入れる平手が目に浮かぶ)。
最近のコーキングは硬化が早くて便利だ。
今日はBUGのヨタハチが納車される。曇りガラスの恐怖と雨漏りの実態を肌で感じ取ってほしいところだ(夕方、雨の間隙を縫って見にいったところ曇りガラスの恐怖と雨漏りの実態を肌で感じ取ってくれていた)。

[本来なら最終章]

ウェザーストリップを接着。両面塗布の後、指触硬化まで放置の後圧着。チャリのパンク修理のノリ(糊?)と同じと思ってくれ!強度はバッチリだった。
センタートンネルにフロアマットを敷く(水抜き穴の位置が悪くてマットで隠れてしまったコトはないしょにしたかった)。あらかじめ付けておいたシフトブーツカバーを調整。
シートレールを取り付けようとしたがうまく合わない?どうやらボルト穴の遊びが大きすぎるらしいのでレール〜シート間のナットを緩めておいてレールをフロアに固定、さっきのナットを締める。
ペダル周りのマットを敷く。最後にシフトレバーを取り付けて完成!
警備会社に連絡をして作業終了を連絡。エンジンを掛けてほしいとのコトなのでキーを回したのだが……

[警備システム暴走す]

掛からない。システムチェックを(電話で)してもらい、充電機を繋ぐとスモールランプが点滅、インパネ下のリレーからノイズ音が響いてる。ランプに電気を使うため充電機に過電流が流れヒューズが飛んだ。
充電できないから手も足も出せない。キーを抜いた状態でスモールランプに電気が供給されることから警備システムの異常と判断、エンジニアに出張してもらうコトになった。

[複雑なシステム]

今回ヨタハチに組み付けた警備システムはクリフォード社IG7000とCBS社のAVLシステム。
特にAVLはクルマの異常を感知すると携帯電話に連絡が入りイグニッションカットが作動、GPSにより地の果てまで自動追跡する優れ物。車両盗難(車重が軽いため3人もいれば台車に載せられる)からクルマを守るには絶対必要な警備システムだ。
エンジニアに確認してもらった結果、何らかの理由でバッテリーが上がったのをIG7000が「バッテリーが外された」と判断。再充電の電流を「別のバッテリーを繋いだ」と判断して様々な威嚇行為を慣行。その負荷(ブザー、ハザード、サイレン等)で充電機のヒューズが飛ぶらしい。
警備システムをバイパスする回路を組み再充電可能な状態にして自走可能になってから入院するコトになった。

[入院プラン]

バッテリー上がりの原因は何だろう?一番怪しいのが雨水による漏電。次にオルタネーターの発電容量不足による電気切れ。どちらにしろ入院ついでで点検をしておこう。
一度完全放電したバッテリーでは冬を乗り切れるか不安なので新品に交換。どうせなら宇宙一の高性能バッテリーにしよう!
いろいろ考えながらボランティアに汗を流す。
夕方には自走できるまで充電されてたから入院させた。
どなどなど〜な〜ど〜な〜……

[何が起こったの?]

今日は退院の日。職場まであーちゃんに借りた折りたたみ自転車で行ってヨタ君に積んで帰る予定。だったのだがバッテリーの入荷が明日になるとのコト。今日は自転車(社用車)で帰る(ビールを呑みながら…)。
翌日やっと退院にした。
バッテリー上がりの原因はいったい何だったのか?
調べてもらった結果、警備システムは「警備状態」になっていようが「警備解除状態」であろうが各種センサーから信号が入ると「準待機状態」になり電気を使う。30分間信号が途絶えると「スリープモード」になり次に信号が入るまで休眠状態になり電力消費が無くなる(パソコンのスクリーンセイバーと同じ感覚)。
内装工事の時にドアを開けたままにした事により「ドアが開いている」信号を拾い警備システムが電気を食い続けバッテリーが上がった…というのが原因でした。
システム的な原因があったため漏電のチェックは程々にしておいたらしい。オルタネーターの発電量は6〜9A(聞いただけだから違うかもしれない)で充分な発電量と判断(本来の発電容量を誰も知らないから…)。
バッテリーを交換し、警備システムの再設定をして退院。
折りたたみ自転車を助手席に(やはりトランクには入らなかった)積もうとしたが入らない。「屋根を外せば上には無限のスペースがあるゼ!」の理論に基付きルーフを車内に収納。無理やり自転車を詰め込んだ。
バタバタとした復旧作業はこうして幕を閉じた。

[宇宙一のバッテリー]

普通のバッテリーは充電容量が70%まで落ちるとセルモーターの動きが怪しくなる。しかし、今回取り付けた「オデッセィPC925MJT」は30%まで低下しても元気にセルが回る優れモノ。充電効率も良く完全放電しても性能の低下が無いとひたすら無敵のヤツだ。

値段は高いが旧車乗りには超お勧めです。

[最後に]

車体と補器類の年代が全然違うのが笑える。次はシフトノブを交換だ!(金が無いから志が低い)


徒然なるままにヨタ8
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